一般社会とかけ離れた過酷な環境で育った男・バビーが、多くの人々と出会い、そして音楽に導かれて自分自身を発見する旅。オランダ生まれオーストラリア育ちのロルフ・デ・ヒーア監督が脚本完成までに10年以上の年月を要した本作は、予算や技術などすべてにおいて映画制作の”普通”に囚われない。バビーが生まれて初めて触れる世界を観客が視覚・聴覚でそのまま体験できる手法が採用され、撮影監督に合計32名ものスタッフが代わるがわる参加したほか、「バイノーラルサウンド録音」でバビーの耳に届く音の刺激をリアルに再現するなど、一切妥協のない作品が出来上がった。小さな作品ながらもヴェネチア国際映画祭に出品されると、一夜にして観客を魅了し審査員特別賞ほか全3部門を受賞。その評判は瞬く間に各国へと広がり20ヵ国以上で上映、ノルウェーでは年間興行収入第2位にランクインする大ヒットを記録した。
母親に命じられるがまま、閉じこもって生きてきたバビー。彼が置かれている、目を覆いたくなるほどの悲惨な境遇に不安を抱きながらも、観る者を衝撃的な感動で包み込む、映画史上稀にみる傑作が30年の時を経て遂に日本初公開となる。

「ドアの外に出れば、汚染された空気の猛毒で命を落とす。」そんな母親の教えを信じ、35年間、暗く汚い部屋に閉じ込められていたバビー。身の回りのすべてを母親が管理し、ただそれに従うだけの日々を送っていた。ある日、何の前触れもなく”父親”だと名乗る男が帰ってきたことをきっかけに、バビーの人生は動き出す。言葉、音楽、暴力、宗教、美味しいピザ……刺激に満ち溢れた外の世界で、純粋無垢なバビーが大暴走!行く先々で出会う誰もが彼の自由で荒々しいスタイルに巻き込まれていく。

ロルフ・デ・ヒーア

1951年、オランダ北ホラント州ヘームスケルクに生まれ、その後オーストラリアで育つ。『ヒコーキ野郎/スカイ・キッド』(1984)で長編映画デビューを果たし、近未来SF映画『エンカウンターズ/未知への挑戦』(1989)や、”モダン・ジャズの帝王”マイルズ・デイヴィスが出演した『ディンゴ』(1991)などを手掛ける。『悪い子バビー』はヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞ほか全3冠を受賞。その後『クワイエット・ルーム』(1996)は第49回カンヌ国際映画祭コンペティション部門へ正式出品され、『Ten Canoes(原題)』ではカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員特別賞を受賞。そして最新作『The Survival of Kindness(原題)』(2022)は第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門へ正式出品された。

ニコラス・ホープ

1958年、イングランド・マンチェスターに生まれ、その後オーストラリアへと移住。
舞台俳優として活動をしていたが、『悪い子バビー』で初めて長編映画へ挑戦。オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞では主演男優賞を受賞した。現在に至るまで、数々のTVシリーズや長編・短編映画へも出演し、2004年には自身のこれまでを振り返る回顧録「Brushing the Tip of Fame」を出版。近年では第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門正式出品である『Limbo(原題)』へ出演するなど、幅広く活躍をしている。

久しぶりに衝撃を受けました!すごいものを観た。強烈で美しい。
—石野卓球(電気グルーヴ)

バビーが間違えるのは、世の中に歪みがあるから。
目を背けたくなる、胸が潰されそうになるその歪みの中でも
「愛すること」を手放さないバビーの姿は、世界をかえる可能性に満ち満ちていた。
だから私はバビーのことを「悪い子」とは言えない。
—鈴木杏(俳優)

この世は空っぽで、模倣と反復だけで成り立っている。
善も悪も、少しずつ形を変えながら、ただ冷たい壁に延々と反響しているだけ。
そんな事実を異常な物語によって見せつけてくれる。
ハッピーエンドなわけがないだろ、涙腺が決壊しそうだ。
—春日武彦(精神科医/作家)


—大橋裕之(漫画家)

危ないところだった。この映画を知らずに、一生を終えていたかも知れない。
こんなにも危険で無邪気な、無垢で奔放な、最後には感動するBAD映画があったろうか。
僕もバビーのおかげで、外の世界に出られた気がする。ほんと”悪い子”だ、バビー。
30年ぶりの日本劇場初公開、ありがとう。
—小島秀夫(ゲームクリエイター)

『悪い子バビー』は、ありのままのあなたを承認する。
親から愛されなかった子どもたちのために、
これからも時を超えてバビーの神話は語り継がれていくに違いない。
ラストシーンに、涙でスクリーンが霞んだ。
—樋口毅宏(ハードボイルド育児作家)

「すべてのタブー」を踏み越えた真実—
ジョン・ウォーターズやファレリー兄弟すら届かなかった境地にタッチした奇跡の一本。
この異形にして破格の大傑作の凄さを、いまどう伝えればいいのだろう。
—森直人(映画評論家)

*敬称略/順不同

ブラック・コメディでもあり、
ありとあらゆるものを実現したドラマでもあり、
カフカ風の悪夢でもあるこの妥協のない映画は、
観る者の五感を刺激する。
-The Guardian

忘れることのできない、感動的で静かな、格別な物語だ。
-Film Written Magazine

無垢な主人公と同じくらいワイルドで予測不能な、
世界的な傑作。
-HeyUGuys

この世界を映し出す暗い鏡のような本作は、
1990年代の人類と環境について、
とてつもない展望を我々に提示する。
-Variety

私がこれまでに観たオーストラリア映画の中で
最も素晴らしく、最も独創的な映画のひとつ…
素晴らしく機知に富んだ…並外れた映画だ。★★★★
-David Stratton, SBS Movie Show

後にも先にもこの本作しかあり得ない、
唯一無二の奇妙な一作。
-Empire Magazine

『悪い子バビー』をカテゴライズすることは不可能だ。
暗いが面白い、憂鬱だが感動的、怖いけど心地よい。
-Horror Society

面白く感動的な自己発見の旅。善と悪、
無知と啓蒙についてを描く現代の寓話だ。
それは、カスパー・ハウザーの物語を描いた2本の映画と、
トリュフォーの『野生の少年』を思い出させる。
『悪い子バビー』はあらゆる面で丹念に作り上げられた、
痛快で奇妙であると同時に面白く、
見事に成功を収めた非常に野心的な映画といえる。
-Los Angeles Times

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